日本ペイター協会 The Walter Pater Society of Japan
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会長挨拶
会長挨拶  野末 紀之
 このたび、当協会の会長を仰せつかりました。これを機会に、ペイターとペイター協会についてひとこと申し述べさせていただきます。

 ウォルター・ペイターが日本で読まれるようになったのは明治20年代、上田敏や平田禿木の青年時代からで、それから130年のあいだ、少数の熱烈な読者に迎えられてきました。魅力の根幹には『ルネサンス』や『享楽主義者マリウス』などにみられる繊細巧緻な表現があります。読者が「少数」なのは、ときに晦渋になる文体や、つかみ所のない着想や奇抜な比喩のせいかもしれません。が、他方ではそれが、好悪ともに「熱烈な」反応を呼び起こしてきました。ペイターや彼をふくむ世紀末研究については、1990年代以後のジェンダーやセクシュアリティに注目した成果が目を引きますが、近年は、オックスフォード大学出版局による初の決定版全集の刊行(継続中)に後押しされ、あらたな展開が期待されます。

 当協会は、会員数では弱小ですが、ペイターの言葉に根気よく立ち向かうひとり一人の「硬い、宝石のような炎で燃える」姿勢においては引けを取りません。ペイターに興味を抱くひと、呪縛されたひと、魅力と反発をおぼえるひと――ともかくペイターが少しでも気になるひとは、ぜひ当協会で研鑽を共にしましょう。それによって研究にも日々の生にもあらたな視野が開けるはずと確信しています。